祖母の瞳
私が大好きなイタリアワインは、言うまでもなくブドウから作られています。
イタリアワインのどこが好きなのかと言うと、あくまで私感ですが、フランスワインなどとは違い、厳しい日光と土地が生み出す、野趣に満ちた力強い味が感じられるところ。
厳しい土地というのは岩石が多い分、ミネラルが豊富なのです。
ブドウは果実に水分を多く含むので、土中のミネラル分が味に露骨に反映されます。
有名なところでは、フランスのシャブリは古代は海中だったことから、牡蠣の化石が多く発見され、それ故にシャブリの白と牡蠣は、数億年の時を越えた最高のマリアージュである、云々……。
だけど、シャブリを始めとするフランスワインは、な~んか「ええとこのおぼっちゃま」って感じがするんです。
そんな自分にとって、当時イタリアワインと言えばバローロ(ネッビオーロ種)か、キャンティ(サンジョヴェーゼ種、等)かというほど単純だったのですが、一石を投じるワインに出会うことになります。
そのワインとは、イタリアはシチリア産のDON ANTONIO(ドン・アントニオ)。
ここでも何度か話題にしている、シチリアのカターニアという街から来たご主人がシェフをしているリストランテで頂いたのが、初めての出会いでした。
肉料理やトマトベースの料理に最適な、ブラックチェリーを思わせる濃厚な果実味と甘いスパイスの香り。そして、ワインにしては強めのアルコール分。
『肉食』な自分にとって、この出会いは最高のマリアージュとなったのです。
ワイン単体で見ても、イタリア中部北部とは全く違う力強さが感じられます。
太陽の強い日差しを思いっきり吸い込んだかのような、sereno感(晴朗、朗らか、という意)。
乾燥した大地ならではの糖度の高いブドウから生み出される、強いアルコール分。
だけど、その中には何とも言えない優しい温かさ、懐かしさが感じられるのです。
ちなみにシチリアのカターニアは、私が初めて降り立ったイタリアの都市。
カターニアのホテルで朝食時に食べた濃厚なブラッディオレンジの味を思い出しつつ、昨夜DON ANTONIOについて改めて調べたところ、上質なNero d'avola(ネロ・ダヴォラ種)から作られていることが解りました。
そこで初めて、ブドウの品種による違いに気づいたのです。
Nero d'avolaは、雨を極度に嫌います。
他のブドウ種にとって、過酷な土地であればあるほど、果実の中に強い糖分を蓄積するのです。まるで、過酷な夏を経た時ほど強く、鮮やかに色づく京都の紅葉のように。
でも、優しい温かさ、懐かしさだけは、どこから来るのか今イチわかりかねていたのです。
そこで何の気もなく伊日辞典を紐解いてみたところ……
Nero【形容詞】
黒い、黒色の/暗い/悪意のある/(経理上の)黒字/(イカの)墨/瞳
Avolo【名詞、文語・古語】 女性詞Avola
祖父/(複数形で)先祖
なるほど、『祖母の瞳』か。
都合良い解釈でしょうが、おばあちゃんっ子だった私には、これだけで納得しました。
実質、シチリアの厳しい大地でしか最大限のポテンシャルを発揮できない、Nero d'avola。
祖母の瞳のような、優しい黒々としたブドウから生まれる、年老いた父の名を冠したDON ANTONIO。
物質的には欧州最貧地域ながらも、心の豊かさでは屈指というシチリアの優しさが詰まっているワインだと思います。
【参考】
Nero d'avolaの本当の意味は『シチリアAvola村の黒ブドウ』と言われています。
だけど、そんなことを無視して、好き勝手にロマンと夢を見させてくれるからこそ、ワインなのだと思います。
◆Morgante Vini (要Flash)
DON ANTONIOを生産しているエノテカ。いつの間にか日本語ページもあり、びっくり!
次の渡伊時は、シチリアに行き、Morgante Viniにお邪魔する予定です。
Posted by ナカノヒト : 2009年03月01日 22:32 | コメント (0)