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「心にうつりゆくよしなしごと」について


「心にうつりゆくよしなしごと」について

<220>Turismo-旅行術 イタリアに限らず、どこでもある話

7月に入ってから、イタリアと日本の間を1つのニュースが飛び交っていました。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、例の「ぼったくり事件」です。

実にイタリアらしい反応・対策に対し、これまた実に日本らしい対応。
オチがついたところで、雑感交えてご紹介します。


①起~コトの発端
以下、7月1日に掲載された Corriere Roma の記事を要約します。

6月19日のランチタイム、日本人カップルがナヴォーナ広場にほど近い、創業150年の老舗のリストランテ「イル・パッセット」で席に着いた。
するとカメリエーレ(ウェイター)がメニューを渡さずに、英語で「全てボクに任せて欲しい」と言った。そこで日本人カップルはカメリエーレを信じてランチを楽しんだ。
料理の内容は、前菜、プリモピアット(パスタとかリゾット)、セコンドピアット(メインの肉や魚)、ジェラートを各2皿ずつ。

そして出てきた会計は、なんと695ユーロ(95,000円前後)。
日本人カップルは何かの間違いだろうと思いつつ、クレジットカードを渡した。
戻ってきたレシートとクレジットカードの明細を見ると、合計額は確かに695ユーロ。
しかも「piccola mancia」(ささやかなチップ)という名目で、勝手に115.50ユーロ(15,000円前後)もカードが切られていた。

申し訳ないけど、日本人カップルにも非があると思います。
海外に出たらわかるけど、日本ほど丁寧・親切・正直な国って無いんですよ。

外国人からしたら、自販機からお釣りがちゃんと出てきたり、パジャマ姿の女の子が深夜1人で買い物に出たり、電車に置き忘れたサイフがちゃんと警察に届いたりするのは、奇跡以外の何者でもないのです。
でも、日本なら普通でしょ?

実は私も、イタリアで1度だけヤられたことがあります。
ベネツィアのバールで、18ユーロの飲食をし、精算時に200ユーロ紙幣を渡したところ、2ユーロを返されて知らぬ顔。
当時はイタリア語での主張もままならなかった上、相手がガタイの良い兄ちゃんだったので、睨み付けはしましたが授業料だと思って退散してきました。

ここで学習したのは『イタリアで紙幣を出すなら20ユーロまで』ということ。
宿代の現金精算で50ユーロ紙幣を出すことはあっても、100ユーロ紙幣や200ユーロ紙幣、更に500ユーロ紙幣なんて、まず出番はありません。
そんな高額精算の時は、大人しくクレジットカードを使った方が安全です。
それに、高額決済が必要な店舗は、大体がVISAかMastersに対応してますし。

イタリア語でケンカ交渉できるなら全く問題ありませんが、イタリアでは話者が少ない英語しか話せなかったり、どちらもダメな場合は、せめて以下に留意すべきです。

1.絶対に公式のメニューを求めること。
2.公式のメニュー上からオーダーすること。
3.お釣りの確認はもちろん、カードの場合は必ず金額を確認。
4.明らかに不当請求の場合は、カードを渡さずに警察へ連絡。

でも、万一ヤられてしまった場合は、その場で携帯電話を取り出し

Telefono alla carabiniere! (テレーフォノ アッラ カラビニエーレ)
「カラビニエーレ(憲兵警察)に電話します!」

と言い、迷わず112をダイアルしましょう。間違いなく店員は慌てだします。


②承~抗議、そして閉店へ
同じくCorriere Roma の記事より。

日本人カップルは断固として抗議。対する店側は「これが平均的な値段だ」と主張。
そこでカップルは警察に駆け込んだが、最初は全く相手にされず、警察官もナメた態度を取っていた。
ところがここでダンディな中年オヤジ(警察署長)が登場。カップルの話を丁寧に聞き、調査の約束をしたのだった。

警察が調査すると、日本人カップルが食べた料理はメニューになかったり、メニューと価格が一致していなかった。
更に警察の依頼でローマ市保険局が調査してみると、衛生上の問題も多々発見された。

ローマ市長はこの顛末に、レストランの営業許可を取り消し、営業再開させないことを発表。
店側は、日本人カップルが12個の生ガキと、1kgの伊勢エビが入ったプリモピアット、1.5kgのスズキを食べた……と反論している。

ここで泣き寝入りをしなかったという点は、見習いたいと思いました。
やっぱり日本人、ナメられ過ぎなんですよね。

で、ここからがイタリアの政治力というか、対応の独特さが見えてきます。
権力者の警察署長が出てきてくれて、一気に解決に動き出すという……。
イタリア在住者のブログなんかを見ていると、いかに権力がある人とコネクションを持っているかが、物事が進む速度はおろか、進むか否かさえも左右することがあるようです。
西洋(オチデント)なのに、東洋支那的(オリエント)だなぁ、と苦笑してしまいますね。

後で判明しますが、このリストランテ「イル・パッセット」では、2人組の日本人を相手に常習的にぼったくり料金を取っていたそうです。
ローマは観光で成り立っている街なので、今回の事件の事件で心ある人々は心底怒っているとのこと。実はぼったくり店というのは、日本で思われているほど多くはないのです。

とは言え、そもそも小食な日本人が、生ガキ12個、1kgの伊勢エビ、1.5kgのスズキなんて、食えるかいっ!


③転~朝日新聞の記事から観光大臣のトンデモ対応

7月18日の朝日新聞で「イタリアの日本人観光客激減 サービス悪い指摘も」という記事が掲載されました。1997年の217万人をピークに減少、2009年は100万人を切るかどうかまで落ち込むようです。

2002年の通貨統合でリラからユーロに代わり、物価が急上昇したことも原因に挙げられますが、観光資源に頼った殿様商売で、サービス面の充実を怠ったことや、悪名高いタクシーやレストランの「ぼったくり」により、リピーターが激減したことが大きいとのこと。

イタリア人にしてみたら、良いものには惜しみなくカネを落とし、礼儀正しい日本人は、願ってもない上得意客。なのにこんな記事を掲載されて、ショックを受けた模様。
とうとうイタリア主要各紙でも「Giapponesi in fuga dall'Italia, "Taxi e ristoranti, prezzi illegali"(日本人観光客がイタリアから逃げていく、タクシーもレストランも価格が不当だ)」と大きく書き出され、ローマのレストランやタクシーでは、客が日本人だとわかると、謝ったり、サービスしたりと、ちょっとした騒動になったようです。

そして極めつけがブランビア観光大臣(左上画像)。
どう見てもマフィアの奥方みたいなこの大臣が「ぼったくり被害者さま、再訪を 伊観光相 政府が費用(asahi.com)」なんてことを言い始めました。
記事をそのまま引用すると、

6月にローマの有名レストラン「パセット」でランチ代として約700ユーロ(約9万3千円)を支払わされた日本人カップルに「とても申し訳なく思う」と謝罪。「政府はレストランをすぐに閉店させ、この店を訴えた」と迅速な対応も強調した。

そのうえで「政府が費用を負担するので、ひどい経験をした2人をローマにもう一度招待したい。イタリアは最高だということを分かってもらうためだ」とした。観光相の事務所は「2人の連絡先が分からないので、名乗り出てほしい」としている。

迅速と言うより、極端な対応。もう、大苦笑を通り越して、絶句です。
名誉心の強さなのか、自らに非がある場合の潔さなのか、はたまたツンデレなのか。
穿った見方をすると「お金持ちな日本人は怒らせてはイケナイ!」という心なのかも知れませんが、とうとう一国の閣僚まで動かす事態となってしまいました。


④結~実に日本人らしいコメント

ブランビア観光大臣の呼びかけに応えてか、茨城県つくば市の男性が名乗り出ました。
そして「ありがたいけれど、イタリア国民の税金を使うことになるので、それは大変困ります」と丁寧に断ったのです。

更に「イタリア政府から正式に招待されてもお断りします。もちろんイタリアへはもう一度行きたいです。もちろん自費で。ぼったくりなんて、世界中どこでもある話でしょう。今度イタリアに行ったら、ヴァチカンをしっかり見たいし、カプリ島で絶景を楽しみたいですね」と語ったそうです。

イタリアの新聞(Corriere Roma)では

Una vera e propria lezione morale, ma anche un atto d'amore nei confronti dell'Italia.
Un sincero ringraziamento e un cortese rifiuto:

いい社会勉強になった、そしてイタリアに好意。
誠実な感謝に、丁重な辞退のことば。

と、大絶賛していました。

私も、ぼったくりは世界中どこでもあると思っています。
「郷に入れば郷に従え」という言葉の原点は「ローマにいるときは、ローマ人のように振る舞え(When you are in Rome, do as the Romans do.)」という言葉。
この言葉の通り、ローマに行ったらローマ市民のように振る舞うべきです。また、ローマに限らず、日本から出るときは細心の注意を払ってしかるべきです。

そりゃあ、治安の良さや正直さって、古今東西関わらず大切だと思います。
だけど、国や国民性、文化によって、物事の優先順位が異なるのです。
自分たちが倫理的に正しくても、異文化は異文化であることを認識しなければならないでしょう。

私だって、182ユーロ(24,000円前後)のお釣りをごまかされても、イタリア好きには変わりません。油断して200ユーロ出した自分も悪いのであり、また、どこの国にもいるぼったくりが、たまたまイタリアで出会ったというだけ。

美しい自然に美術品、美味しい料理、そして、陽気で人なつっこいイタリア人。
一度行ったら「もう一度行きたい!」と思わせてくれる、ステキな国なのです。

今秋ローマに行った時、国籍を訪ねられたら、胸を張って笑顔でSono giapponese! (日本人だよ!)と答えようと思います。
もちろん、Amo l'Italia. (イタリアが好きだよ)と言うことも忘れずに!


◆asahi.com
 ぼったくりランチ9万円 ローマの有名レストラン閉店(7月3日)
 イタリアの日本人観光客激減 「サービス悪い」指摘も(7月18日)
 ぼったくり被害者さま、再訪を 伊観光相「政府が費用」(7月23日)
 伊ぼったくり被害の男性「ご招待不要、むしろ困ります」(7月31日)

◆RISTORANTE PASSETTO

Posted by ナカノヒト : 2009年07月31日 23:50 | コメント (0)

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